toggle
痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」
2018-12-14

Topic No.185
顎関節症に関連した生物心理社会的特徴の長期変化:OPPERA研究からの知見

Long-term changes in biopsychosocial characteristics related to temporomandibular disorder: findings from the OPPERA study
Fillingim RB, et al. Pain 2018; Epub ahead of print

要約

目的:
痛みを伴う顎関節症(以下TMD)は、多様な臨床的、心理社会的、生物学的要因の変化によってもたらされる疾患である。縦断研究(OPPERA研究)では先行して、TMDの発症や持続のリスクを増大させる生物心理社会的因子について明らかにしたが、TMDの悪化や軽減後におけるそれらの因子の長期変化についてはほとんど知られていない。そこで本研究では、対象被験者における、TMDの状態と生物心理社会的機能の長期変化を明らかにすることを目的とし、以下のような仮説をたてた。1)生物心理社会的因子によって非TMDであった被験者がTMDを発症し、それがTMDの長期維持に関与する 2)生物心理社会的因子の良好な変化はTMDを改善する

方法:
OPPERA研究では第一次試験として、2006年から2008年に非TMD被験者を3258名、2006年から2013年に慢性TMD被験者を1088名集めた。本研究では第二次試験として、第一次試験に参加した被験者のうち平均7.6年のフォローアップ期間で再度登録できた694名を対象とした。それらの被験者は以下のように群わけされた。
①非TMD-非TMD群:最初から最後までTMDを発症しなかった被験者(422名)
②非TMD-TMD群:参加当初はTMDではなかったが、第二次試験時にTMDと診断された被験者(28名)
③インシデントTMD-非TMD群:第一次試験期間中にTMDを発症し、第二次試験時にはTMDではなくなっていた被験者(29名)
④インシデントTMD-TMD群:第一次試験期間中にTMDを発症し、第二次試験時にもTMDであった被験者(26名)
⑤慢性TMD-非TMD群:第一次試験時にTMD群であったが、第二次試験時にはTMDではなくなっていた被験者(143名)
⑥慢性TMD-TMD群:最初から最後までTMDであった被験者(46名)
筆者らは、それらの被験者の心理社会的特徴(質問紙)、痛み感度(熱、圧痛覚閾値など)、自律神経機能を評価する心血管系の指標(心拍数、血圧)、臨床的な顎機能を評価項目として抽出した。

結果:
1. 非TMD –TMD群、またはTMD-非TMD群で、痛みの悪化や改善に関連して生物心理社会的機能変化を示した。
2. 非TMD-TMD群において、症状と痛みの感度は心理社会的機能の悪化に伴って強くなった。
3. 第一次試験時点で慢性TMDを持っていた被験者は、二次試験段階でTMDがあっても、症状や顎機能、身体症状レベル、抑うつにおいて改善の傾向を示した。
4. 状態の変化が見られた全ての被験者で、臨床所見および心理社会的因子は、QSTや自律神経機能と比べ、明らかにTMD状態と相関を示した。

考察:
これらの知見は、TMD状態の変化に関連して生物心理社会的機能が変化することを示唆するという、かなり複雑なパターンを表している。特に、慢性TMDの被験者は数年にわたって痛みがあるにも関わらず、様々な生物心理社会的パラメータが改善していた。これは持続痛に対応するため、潜在的に、継続的な対処と適応能力を有している可能性を示唆している。

コメント

顎関節症は筋性、関節性の両面で評価され、痛みは筋性が由来となることが多いことが知られている。また、自然寛解が認められることでも広く知られている。今回紹介した論文では、大規模研究による顎関節症の長期推移を調査し、心理社会的要素がTMDの症状変化に関与することが示唆された。すなわちTMDは、症状そのものだけでなく、患者の心理社会的因子に配慮した治療の介入が必要であることを示唆する内容であると思われる。

ホームページ担当委員:西須 大徳