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痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」
2019-05-20

Topic No.193
急性腰痛患者における集中的な患者教育の効果:ランダム化比較試験

Effect of Intensive Patient Education vs Placebo Patient Education on Outcomes in Patients With Acute Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial.

Traeger AC et al. JAMA Neurol. 2019; 76(2): 161-169

要約

はじめに:

国際的なガイドラインでは、急性腰痛を管理する上で、助言、教育、reassurance、鎮痛剤を必要に応じて提供することを推奨している。多くの急性腰痛患者はこのような治療で軽快していくが、慢性腰痛に移行する場合も少なくない。慢性化の危険性が高い患者に対しては、何らかの追加介入が必要とされる。急性腰痛に対して、集中的な患者教育を行うことは有効であると2008年に発表されたコクランシステマティックレビューの著者は述べているが、プラセボ群を設定した研究デザインで検証した報告はない。集中的な患者教育が急性腰痛患者の痛み関連アウトカムを改善するかどうかプラセボ群を設定したランダム化比較試験で検証した。

方法:

対象者は18歳から75歳の急性腰痛患者(痛みの期間は6週間未満)。除外基準は、①慢性腰痛(3ヶ月以上)、②過去1週間の痛みの強度がNRSで3/10未満、③痛みの慢性化の危険性が低い(痛みの慢性化の危険性を評価するPICKUPにて30 %未満)、④臨床上で深刻な脊椎の病態(馬尾症状、感染、骨折、がん)がない、⑤英語でコミュニケーションが不十分、⑥過去に脊椎手術を受けている、⑦研究参加が難しい精神的健康状態、とした。

介入方法に関して、集中的な患者教育群は1時間×2回のセッション(痛みと生物心理社会的な修飾因子に関する情報と、活動性を保つことやペーシングなどの自己管理手法)、プラセボ患者教育群は1時間×2回のセッション(情報や助言などを行わない傾聴)を実施した。

主要アウトカムは過去1週間の痛みの強度の平均(NRS)、二次的アウトカムは能力障害(ローランドモリス質問票)などを設定し、ベースラインから1週間後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後に評価を行い、ITT解析による線形混合モデルで分析を行った。

結果:

集中的な患者教育群は101名、プラセボ患者教育群は101名であり、すべての評価時期においてフォローアップ率は90%以上であった。集中的な患者教育群は、プラセボ群と比較して、痛みの強度の改善に関して有効ではなかった(3ヶ月後の痛みの強度の平均[標準偏差]:2.1[2.4]vs 2.4[2.2];平均値の差、-0.3[95%信頼区間、-1.0 – 0.3])。痛みに伴う能力障害は、集中的な患者教育群において1週間後と3ヶ月後の時点では小さい効果があったが、6ヶ月後、12ヶ月後では効果を認めなかった。

結論:

急性腰痛患者にプライマリケアで推奨される患者教育を集中的に2時間追加して実施することは痛み関連アウトカムを改善しなかった。慢性化のリスクが高い急性腰痛患者に複雑で集中的な患者教育を行うことに関して、診療ガイドラインで推奨するには時期尚早かもしれない。

コメント:

Topic No.176において、腰痛に対する患者教育のreassurance効果に関するシステマティックレビューを紹介している。今回の論文は、そのレビューの著者による患者教育に関する知見である。痛みの臨床現場において患者教育は重要といえるが、急性腰痛管理において、どのような患者にどの程度の患者教育をするべきかについて、今後も検討していく必要があることを示唆している。

ホームページ担当委員:中楚 友一朗