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痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」
2018-12-14

Topic No.186
内臓痛は線維筋痛症症状のトリガーとなる

Visceral pain as a triggering factor for fibromyalgia symptoms in comorbid patients
Costantini R, et al. Pain 2017; 158(10): 1925-1937

 

要約

背景:
線維筋痛症(FM)は女性に多い慢性広範性疼痛であり、その病態として中枢性感作の関与が指摘されている。また、過敏性腸症候群(IBS)や月経困難症、子宮内膜症、腹痛などの内臓痛を高頻度で併発する。本研究は以下の2つを目的に行った。
1. 内臓痛を併発しているFM患者は、併発していない患者と比べてFM症状(自発筋痛、痛覚過敏)が強いのかを調べ、内臓痛がFM症状増悪因子になりうるかを検討する。
2. 内臓痛に対する治療を行った群と無治療群のFM関連性疼痛、服薬状況、痛覚過敏を比較し、内臓痛のFM症状への影響を明らかにする。

方法:
対象はアメリカリウマチ学会の診断基準によりFMと診断された外来通院女性患者とし、以下の5群に分類した。
(1)FMのみ(n=33、36.7±4.5歳)、(2)FM+IBS(n=29、35.5±4.8歳)、(3)FM+月経困難症(n=31、34.8±5.1歳)、(4)FM+子宮内膜症(n=25、35.2±3.4歳)、(5)FM+大腸憩室症(n=24、37.8±2.5歳)。

実験①:全ての対象者についてFM関連突発痛の回数、筋骨格痛強度、服薬量を6か月間、前向きに評価した。また、内臓痛併発患者はそれぞれの内臓痛に関する評価(IBSの疼痛日数、月経サイクル、腹痛の強度と回数)を行った。6か月間の前向き評価終了時に18か所のトリガーポイントの圧痛閾値(PPT)、全身(僧帽筋・三角筋・大腿四頭筋)の電気痛閾値とPPTを測定した。
実験②:内臓痛の治療(食事療法、ホルモン治療、レーザー治療、手術など)を行い、実験①の測定項目について無治療群と比較した。

結果:
実験①:全ての内臓痛併発群はFM単独群と比較してFM関連突発痛の回数、服薬量が有意に高値、トリガーポイントのPPT、全身の電気痛閾値とPPTが有意に低値を示した。また、内臓痛(IBSの日数、月経痛、腹痛)はFM関連疼痛と正の相関、筋の疼痛閾値と負の相関を示した。
実験②:内臓痛に対する治療後、無治療群と比較して全測定項目(疼痛回数、強度、服薬量、トリガーポイントおよび全身の痛覚過敏)が有意に改善した。

考察:
本来内臓痛は、疼痛部局所である腹部での痛覚過敏は生じるものの広範な痛覚過敏までは生じないことが一般に知られている。したがって、今回の結果、内臓痛を併発しているFM患者の方が広範な痛覚過敏を認め、さらに内臓痛の治療により痛覚過敏も減弱したことは、内臓痛が中枢感作を助長しFM症状の増悪要因となることを示唆していると考えられる。以上よりFMに併発する内臓痛に対し系統的な評価と治療を行うことはFM治療の一つの戦略になるかもしれない。

コメント

FMは他疾患の併発や心理社会的に複雑な背景を持つ患者が多い。その中でも心理社会的問題が特に注目される傾向にあり、それらに対する治療介入が奏功する症例は少なくないのも事実である。しかし、心理社会的問題が明らかでない症例も存在する。本報告のみでは内臓痛がFM症状の特異的な増悪因子とまでは言えないが、少なくとも身体症状の訴えに目を向け、適切に評価・治療することの重要性を再認識させるものであると考える。

ホームページ担当委員:城 由紀子