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痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」
2019-04-03

Topic No.192
人工膝関節全置換術後の術後遷延痛における潜在的な危険因子の検討

Persistent postoperative pain after total knee arthroplasty: a prospective cohort study of potential risk factors

Rice DA, et al.: Br J Anaesth 121 (4): 804-812. 2018.

要約

背景

人工膝関節全置換術は,変形性膝関節症の観血的治療として用いられるが,術後遷延痛が生じることが多い。本研究の目的は,人工膝関節全置換術から6か月及び12ヵ月後に生じる重篤な遷延痛の予測因子について,前向きコホート研究で同定することである。

方法

・デザイン:前向きコホート研究

・対象:片側に人工膝関節全置換術を施行した300名

・解析方法:多変量ロジスティック回帰分析

・説明変数(術前または術直後)

1)医学的変数:年齢,性別,BMI,WOMAC疼痛得点(WOMAC),併存する疼痛部位,神経障害性疼痛得点(LANSS),術直後の膝痛(VAS)

2)精神心理学的変数:抑うつ,特性不安,破局的思考,術後に経験すると予測する痛みの強さ

3)神経生理学的変数:圧痛閾値,時間的加重(Temporal summation),条件付き痛み変調(conditioned pain modulation)

4)遺伝的変数:COMT (rs4680),OPRM1 (rs1799971)

5)手術変数:手術時間,麻酔薬の種類,膝蓋骨の処理方法

・目的変数(術後6か月および12ヵ月)

1)疼痛得点(WOMAC)

2)機能障害得点(WOMAC)

3)神経障害性疼痛得点(S-LANSS)

結果

重篤な術後遷延痛の罹患率は,術後6ヵ月で21%(n=60),12ヵ月で16%(n=45)であり,その中で神経障害性疼痛が疑われるものは,術後6ヵ月で55%(n=33),12ヵ月で60%(n=31)であった。多変量ロジスティック回帰分析において,術後6ヵ月と12ヵ月の目的変数として最終モデルに残ったのは疼痛得点(WOMAC)であり,術後6ヵ月では,術前の疼痛得点(WOMAC),術後に経験すると予測する痛みの強さ,特性不安,時間的加重の組み合わせで,術後12ヵ月では,術前の疼痛得点(WOMAC),術後に経験すると予測する痛みの強さ,特性不安の組み合わせであり,66%の患者を中等度で分類可能であった。

コメント

変形性膝関節症に伴う膝痛は,関節周囲組織の退行性変化によって生じる侵害受容性疼痛と考えられてきたが,本研究結果より,その重症・遷延化に神経障害性疼痛の関与が示唆される。また,人工膝関節全置換術を行う際には,術前の痛みの程度や手術による疼痛改善の期待度,特性不安や神経感作の程度などを評価し,観血的治療の適応を吟味する必要があるかもしれない。

ホームページ担当委員:坂野裕洋