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痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」
2019-05-29

Topic No.194
下肢骨折後の慢性疼痛患者における定量的感覚検査と電流知覚閾値検査

Quantitative Sensory Testing and Current Perception Threshold Testing in Patients With Chronic Pain Following Lower Extremity Fracture.

Griffioen MA et al, Biol Res Nurs. 2018 Jan;20(1):16-24.

要約

背景:慢性疼痛は下肢骨折患者にとって重大な問題である。痛覚過敏は多くの慢性疼痛疾患において確認されているが,下肢骨折後の慢性疼痛患者においても痛覚過敏を呈するかはまだ知られていない。

目的:下肢骨折後の慢性疼痛患者を対象に定量的感覚検査(Quantitative sensory testing:QST)と電流知覚閾値(current perception threshold:CPT)を測定し,健常者と比較すること。

方法:対象は少なくとも1回の骨折を経験している下肢骨折患者(骨折群)14例と健常者(対照群)28人とした。測定項目は,(1)Short-form McGill Pain Questionnaire-2 (SF-MPQ-2),(2)触刺激と振動刺激に対する機械的閾値,(3)ピンクリックと圧刺激を区別できるか,(4)寒冷・温熱刺激に対する知覚閾値,(5)冷・熱痛閾値,(6)圧痛閾値,(7)CPTとし,すべてのテストを両下腿内側の中央で測定した。CPTはAβ線維の指標として2000Hz,Aδ線維の指標として250Hz,C線維の指標5Hzの閾値を測定した。

結果:骨折群のSF-MPQ-2は4.3±1.5,対照群0.7±1.1で有意に高値を示した。下肢骨折患者の86%が脛骨・腓骨骨折を経験しており,次に多いのが足関節,骨盤骨折であり,受傷から約22.3カ月経過していた。骨折群は対照群と比べ,2000Hzおよび250HzのCPTと温熱刺激に対する知覚閾値が有意に高く,その他の項目に有意差はなかった。

結論:本研究は下肢骨折後の慢性疼痛患者を対象にQSTおよびCPTを用いて末梢神経の機能を調べた最初の研究である。下肢骨折後に慢性疼痛を有する患者は骨折側の知覚鈍麻を経験している可能性が示唆された。この結果は他の慢性疼痛疾患で確認されている知覚過敏とは対照的であった。

コメント:筆者らの仮説は下肢骨折後の慢性疼痛患者も,他の慢性疼痛疾患と同様に知覚過敏を呈していると考えられていたが,QSTおよびCPTは対照的な結果となった。本研究の限界点して,骨折群のサンプルサイズが少ないこと,損傷部位や期間が異なること,また,受傷時の神経損傷の程度についての情報がなかったことを挙げており,今後も検討していく必要があると考えられる。

ホームページ担当委員::山口修平