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痛みの医療への社会的責任をはたすための認定特定非営利活動法人 「いたみラボ」

いたみについて|Q&A

Q. 原因のよくわからない慢性疼痛(と考えれる痛み)で、これまで色々治療していますが、改善されません。近くでいい病院を教えてください。
A.
慢性痛に対する局所的な治療の継続だけでは、日常生活への支障が改善されないことが多く見受けられます。厚生労働省「慢性の痛み対策研究班」では、痛みの包括的な診療体制を考えるための”痛みセンター連絡協議会”を設立して、専門的な観点から、慢性の痛みの課題を整理し対応策を模索してきております。長引く痛みでお困りの方は、一度以下の「痛みセンター連絡協議会」施設への受診をお勧めします。

【痛みセンター連絡協議会 所属医療機関】
● 札幌医科大学附属病院 整形外科・リハビリテーション科
● 福島県立医科大学附属病院 リハビリテーション&痛みセンター(整形外科)
● 東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンター、整形外科・脊椎外科
● 東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック
● 順天堂大学附属病院 ペインクリニック
● 愛知医科大学病院 痛みセンター
● 滋賀医科大学附属病院 ペインクリニック
● 大阪大学医学部附属病院 大阪大疼痛医療センター
● 岡山大学運動器疼痛疾患治療研究センター
● 高知大学医学部附属病院 痛み外来(麻酔科・整形外科)
● 九州大学病院 ペインクリニック
《平成26年度より所属医療機関》
● 新潟大学医歯学総合病院 産科婦人科、総合リハビリテーションセンター
● 獨協医科大学病院 麻酔科
● 日本大学医学部附属板橋病院 痛みセンター
● 富山大学附属病院 整形外科
● 三重大学病院 整形外科
● 愛媛大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科(痛み外来)
● 山口大学医学部附属病院 整形外科
● 佐賀大学医学部付属病院 ペインクリニック科

※各施設への、具体的な受診手続きについては、こちらをご参照ください。

Q. 交通事故の後、首の後ろや頭の痛みがとれません。どうしたらよいでしょうか。
A.
交通事故の後、「外傷性頚部症候群」や「むち打ち症」として首の後ろの痛みや頭痛が残ることがありますが、その病態としては非常に複雑なものと考えられています。
近年、これらの病態を「外傷性脳脊髄液減少症」と結びつけて考える動きがあるようですが、その因果関係については結論が出ておらず、現在も研究が行われているようです。尚「脳脊髄液減少症」については、H22年度より、厚生労働省研究として行われておりますのでこちらをご参考ください。
上記研究をみていきますと、現在のところ「脳脊髄液減少症」を診断することは困難であるものの、その状態を表すであろう「脳脊髄液漏出症」または「低髄液圧症」について検討がなされており、それぞれの基準作りが行われているようです。

また、これらの病態には心理社会的要因が関与しているという報告もみられます。
1991年に日本で発生した、交通事故関連の「むち打ち症」1000例(有効分析例784例)について調査した研究によりますと、平均治癒期間は73.5日であり、事故後3か月時における治癒率は70%であったと報告されています。また6か月以上の治療期間を要した症例は、通院例が全体の7.7%でに対し、入院例は31.5%であり、入院そのものが治癒期間に影響をしているのではないかとも考えられています。(竹内,MB Orthop.12(1):1999)
一方で、追突事故の被害者に対して事故補償制度自体がないギリシャでは、事故の後、頚部痛や頭痛、めまいなどの症状は生じるもの、患者の90%以上は4週間以内に症状が改善し、6か月後に障害を訴えるケースはなかったと報告されています。(Partheni M, Clin Exp Rheumatol. 2000
以上のような報告から、治療の扱われ方により、症状改善が左右される可能性がありそうです。

推奨されている治療法
① 急性むち打ち症に対して最も有効性が期待される治療は以下の2つである。
○ 頚椎の運動を通常通り行って良いことを説明し、過度の安静をしないように教育し実践させること。
○ 関節可動域の拡大を目的とした運動や筋活動に着目した運動など規定の機能的な運動療法が有用である。

② 頚部の固定具の装着は、むち打ち症からの回復を遅らせる可能性がある。

③ 慢性むち打ち症に対する有効性が最も期待できる治療は以下の4つである。
○ 頚椎の運動を通常通り行って良いことを説明し、過度の安静をしないように教育し実践させること。
○ 関節可動域の拡大を目的とした運動や筋活動に着目した運動など規定の機能的な運動療法が有用である。
○ 心理療法をリハビリテーションと組み合わせて実践することが有用である。
○ 一部の症例に対しては、ラジオ波神経焼灼術が有効なことがある。
(引用「運動器痛のファクトシート」IASP編 日本運動器疼痛学会誌 別冊/2010)

Q. 慢性疼痛における生物心理社会モデルとはどのようなものですか。
A.
腰痛、首すじの痛み(肩こり)に代表されるような運動器の痛みは、なかなか治りにくい長引く痛み=「慢性疼痛」に陥りやすいといわれています。近年このような、長引く痛みの原因は、従来病院で“診断される病名”に必ずしも当てはまらないのではないかと考えられるようになってきています。例えば、長引く腰痛の場合、「腰痛の原因」に対する診断名として、レントゲンやMRIから判断される「椎間板ヘルニア」や「腰椎すべり症」という病名が、痛みの原因に“必ずしも当てはまらない”という考え方です。

近年、世界中で、このような慢性疼痛の原因を様々な角度から分析しようとする研究が行われています。そこで痛みの原因を、従来病院で診断されるような体の異常(生物学的要因)と、年齢や環境、社会的立場まで考慮したストレス環境(心理社会的要因)の混在した状況として捉え、これらが複合された状態をその人の痛みの状態として考えるのが「生物心理社会モデル」という考え方になります。
つまり、この場合、痛みの原因の候補は、骨、筋肉、関節、内蔵、神経、など損傷及び生体内での免疫反応、炎症、血流変化、心拍変動、といった生物学的要因のほかに、やる気、抑うつ度、健康や生活への不安、家族生活のストレス、学校・仕事場のストレス、などの心理社会的要因が混在したものとして考えられ、より多面的な対応が必要となってきます。

では、このような複雑な要素が絡み合う“生物心理社会要素の混在した痛み”に対してどのように対応していけばよいのでしょうか?
国際疼痛学会(IASP)では、このような運動器の慢性疼痛への対処法として、「学際的アプローチ」を推奨しています。学際的アプローチとは、視点の異なる複数科の立場の医師(整形外科、麻酔科、脳外科、精神科など)及び看護師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどがチームとなり対応していく取り組みをさします。
また「学際的アプローチ」の治療方法としては、「認知行動療法」及び「理学・運動療法」の組み合わせが中心になります。

最後に一つの研究を紹介します。
腰椎椎間板ヘルニアに対する手術後に腰痛が残存することがありますが、この腰痛に対しては、「腰椎固定術」が効果的な治療法であることが判明しており、現在でも主流な手術治療法として行われています。
そこで、Brox博士らは、腰椎椎間板ヘルニアに対する手術後の腰痛が1年以上続いている「慢性腰痛症例」を対象に、従来の手術による腰椎固定術治療または、手術を行わない「認知行動療法」と「理学・運動療法」の組み合わせ治療の2つの治療法に振り分け、それぞれの治療1年後にその成績を比較しました。その結果、どちらの治療法でも改善が得られましたが、改善度に関しては2つの治療に差は見られませんでした(Pain. 2006 122:145-55)。

Q. 集学的治療とはどのような治療ですか。
A.
集学的な治療とは、医療分野において、それぞれ異なる専門領域の医師、看護師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなどがチームとして症例検討会を行い、または他科と連絡を取り合い(リエゾンカンファレンス)、患者の治療方針・計画を立案する取り組みのことです。
特に慢性的な痛みは様々な要因によって引き起こされます。痛み治療の専門スタッフが、痛みの身体的、精神的、社会的な相互関係を多方面から評価し、各専門医学領域と提携して集学的かつ統合的なアプローチを行うことが必要です。

集学的アプローチは大きく分ければ、身体的アプローチ心理・社会的アプローチに分けられます。身体的アプローチでは麻酔科医・整形外科医・脳外科医・理学療法士などの専任スタッフが、心理・社会的アプローチでは精神科医・心療内科医・臨床心理士・看護師などの専任スタッフが関わります。具体的にいえば、患者に対して診察室の中という一面だけを診るのではなく、受付スタッフ・看護師とも連絡・協力し、待合室での様子、質問紙記入時の様子などを知ることが有意義であり、多面的な患者の様子を評価・分析することに繋がります。

近年、特に痛みに対する集学的アプローチの必要性が高まり、集学的アプローチを実践するための体制・環境づくりが活発に行われています。一方「複数の治療法を組み合わせて行う」ことが「集学的な治療」だと間違って認識されているケースがあります。
患者さんにとって最良となる治療法をチームで見つけることが「集学的治療」であり、多種多様の治療法をやみくもに行うことは「集学的治療」とはいえません。つまり、集学的治療には、様々な職種を含めたカンファレンスが非常に大事だと考えられます。また、数ヶ月ごとに治療効果を評価し、以後の治療介入を向上させていく一連の流れが適切な集学的アプローチであるといえます。

Q. 子宮頸がんワクチン接種後にひどい痛みがでてきました。ワクチン接種との因果関係はありますか?
■子宮頸がんワクチンと痛みの因果関係について
Q1. 子宮頸がん予防ワクチン接種後にひどい疼痛が出現しました。予防接種と何か関係があるのでしょうか?
A1.
 子宮頸がん予防ワクチンの安全性に関する調査をみてみると、米国CDCによる子宮頸癌予防ワクチン(商品名:ガーダシル)の市販後副作用調査報告では、2006年6月から2008年12月までの2,300万回の接種から772件の副作用情報が得られ、失神、接種部位の局所反応、めまい、吐き気、頭痛などが報告されていますが、これらの副作用は他のワクチン接種でも生じるレベルと同等であると結論されています。

 また、我が国での子宮頸がん予防ワクチン(商品名:サーバリックス)の臨床試験では、A型肝炎ワクチン接種と比較して、局所反応(痛み、発赤、腫れ)、関節痛、疲労感、頭痛、筋肉痛などの症状が、やや多く報告されましたが、重篤な副作用は認められませんでした。さらに、子宮頸がん予防ワクチンの安全性や有効性に関する諸外国の研究を総括した報告においても、”今後の継続的な調査は必要であるが、現時点でワクチンは安全であり、女性の健康維持へ有用であると考えられる”と結論付けられています。

 日本において、2009年12月販売開始したサーバリックス®の副作用報告状況については、その調査報告によると、ワクチン接種後に重篤な症状が出現したものは全体の0.001%となっています。

 子宮頸がん予防ワクチン接種後の痛みについての報告を受けて、厚生労働省が調査した結果、ワクチン接種の有効性との副作用等報告の中で、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。
 しかしながら、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な痛みが、子宮頸がん予防ワクチン接種後に報告されていることに関しては、厚生労働省の指揮のもとに研究班が組まれ、現在慎重に調査中です。

Q2. 子宮頸がん予防ワクチンが持続的な痛みを引き起こす原因には何が考えられるのでしょうか?
A2.
 現在のところ、その機序については詳細な解析を進めているところであり、はっきりとした原因はわかっていません。

 平成24年7月現在、子宮頸がん予防ワクチンは,組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチンであるサーバリックス®と、組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチンであるガーダシル®の2種類が承認、販売されております。両者とも組換えDNA技術を用いてHPVのL1キャプシド蛋白質を発現させ、ウイルス様粒子に再構成したものを抗原として用いています。

 これらの物質を体内へ注射すると、局所に赤みや腫れが生じることから、自然な免疫反応として局所的な炎症が引き起こされているものと考えられます。このような免疫反応が、現在報告され問題となっている持続的な痛みとの関連しているのかについて、調査を行っています。

 また、一方で、注射に対する恐怖や不安、注射後の局所の痛みに対するトラウマなどの精神的要因が持続的な痛みの引き金となることも稀なことではありません。このような原因が考えられる場合、集学的な痛み治療による改善が期待できます。Q4に示す大学病院に一度受診することをお勧めします。

Q3. 子宮頸がん予防ワクチン接種後に持続する痛みに対してどのような治療をしたら良いのでしょうか?
A3.
 現在のところ、子宮頸がん予防ワクチン接種後の持続的な痛みに関してその発症原因は不明であることから、標準的な薬物療法やその他の治療法はありません。長引く痛みは、注射をうけた局所的な問題だけでなく、本人の感じているストレスや社会背景など様々に絡み合って引き起こされることもあります。そこで、まずは慢性的な痛みをお持ちの方と同様に、医学的検査及び社会的なストレス問題などのチェックを受けてもらい、個々の症状に応じた治療を行います。

 薬物療法においては、治療対象のほとんどが若い女性であることから、原則的には、強い痛みを訴えている場合でも、医療用麻薬(オピオイド)は依存性の問題および副作用のほうが懸念されることから極力使用を避けることが望ましいと考えられます。

 また、弱オピオイド系鎮痛薬および抗不安薬・睡眠薬(いわゆるベンゾジアゼピン系薬剤)の安易な投与も避け、投与を行った場合には、効果の有無を慎重に評価する必要であるといえます。また抗うつ薬は、抑うつ症状がみられる、神経障害に伴う痛みがあるなどの明らかな適応がある場合以外では、積極的に投与しないことが推奨されます。

 上記の薬の名称などについて、不明な点がある場合、当NPOでの電話相談窓口(月・水・木)にて対応しておりますので、ご相談ください。

Q4. 子宮頸がん予防ワクチン接種後に持続する痛みを治療するためには、どのような治療機関を受診したら良いのでしょうか?
A4.
 昨年9月より厚生労働省健康局と協議の上、HPVワクチン接種後の副反応(主として痛み、しびれ、脱力など)について被接種者とそのご家族に対して適切な医療を提供するための診療体制を整備して参りましたが、今年度より新たに痛みセンター連絡協議会 所属医療機関を8施設増設いたしましたのでご案内申し上げます。
 引き続き、ワクチン接種後の急性炎症が軽快せず、痛みやしびれ等の症状が持続(目安として2~4週間以内)している被接種者におかれましてては、痛みセンター連絡協議会に所属する医療機関(下記)の受診をお薦めします。受診の際は、これまでの検査結果や診療内容が記載されている医療機関からの診療情報提供書をご持参くださいますようお願いします。

【痛みセンター連絡協議会 所属医療機関】
● 札幌医科大学附属病院 整形外科・リハビリテーション科
● 福島県立医科大学附属病院 リハビリテーション&痛みセンター(整形外科)
● 東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンター、整形外科・脊椎外科
● 東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック
● 順天堂大学附属病院 ペインクリニック
● 愛知医科大学病院 痛みセンター
● 滋賀医科大学附属病院 ペインクリニック
● 大阪大学医学部附属病院 大阪大疼痛医療センター
● 岡山大学病院麻酔科蘇生科 ペインセンター
● 高知大学医学部附属病院 痛み外来(麻酔科・整形外科)
● 九州大学病院 ペインクリニック
《平成26年度より所属医療機関》
● 山形済生病院 リハビリテーション科
● 新潟大学医歯学総合病院 産科婦人科、総合リハビリテーションセンター
● 獨協医科大学病院 麻酔科
● 日本大学医学部附属板橋病院 痛みセンター
● 富山大学附属病院 整形外科
● 三重大学病院 整形外科
● 愛媛大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科(痛み外来)
● 山口大学医学部附属病院 整形外科

※上記施設へ受診する場合、受診手順についてはこちらをご参考ください。

Q.心身の反応とはどうのようなものですか?
A.
■心身の反応による痛みについて
昨年、子宮頸がんワクチン接種後に生じた痛み症状に対して、厚労省副反応部会から、「心身の反応」という言葉がでてきました。一方、未だに医療者の間でも、心身の反応(機能性身体症状)という言葉への誤解が少なありません。心身症、あるいは心身の反応、機能性身体症状という用語が正しく理解されていないのが現状のようです

以下、厚労省が公開している資料の一部を参考にしています。

○ 心身の反応(機能性身体症状)は精神疾患ではなく、心因性疾患を指す用語でもありません。
心身の反応(機能性身体症状)は、原因に心理的要因があると断定するものではなく、その症状の原因・経過に心理・社会的要因が影響しているものをさします。心身の反応(機能性身体症状)は、身体疾患ともとらえられています。身体の組織等に明らかな病理所見(正常でない組織)を呈する疾患を器質的疾患と呼びますが、このような組織異常が存在しない状態でも身体症状(身体の異常状態)を有するもので、あくまで、機能性疾患であるということが、他の一般の身体疾患とは異なると考えられます。

○ 器質的身体疾患と機能性身体疾患
感染や炎症、あるいは血管障害、変性疾患、などで細胞、あるいは組織が破壊、あるいは変化を受けた結果、症状として現れる疾患を器質的疾患と呼びます。多くの身体疾患はこれに属すると考えられます。以前の理解では身体疾患はすべてこれに属すると考えられてきましたし、現在でもその考え方は根強く残っています。しかしながら、身体は心(精神心理状態)とお互いに影響を及ぼしあうことが理解され、心身症の概念が生まれました。現在では多くの疾患がこれに属すると考えられています。日本心身症学会によると循環器系、呼吸器系、消化器系、神経系等多くの疾患がこれに属すると考えられています。また全身の痛みを主訴とする疾患等もこれに含まれるとする考え方があります。
心身症、あるいは、心身の反応による症状(疾患名のつかない症状群はこう呼ぶ)が全て機能性疾患というわけではなく、一部には器質的病変も含まれるため、いずれか一方、で理解できない疾患も多く含まれます。機能性のみの疾患の中には、起立性調節障害、自律神経失調症なども含まれ、緊張性頭痛なんかもここに含まれます。これで理解されるように、機能性病態だからといって、心の持ちようで治るわけでも、罹患するのは患者の責任というわけでもありません。