紀元前:太古より人が痛みに侵されてきた事が記述されています。
紀元前4世紀:アリストテレスは、痛みを感情と考えていました。
紀元後:古代ギリシャの医学者ガレヌスは、痛みは末梢神経により伝えられ皮膚の末梢神経に中程度の刺激が加わると触覚が、強い刺激が加わると痛みが生じると説明をしました。
1600年代:デカルトによる痛みの伝導路や痛みによる反射の記載がされました。
1900年代:シェリントンは侵害受容器の概念を記述しました。
1960年代:メルザック/ウォール 痛みは太い神経の活動によって抑えられることが理論的に述べられました。
1980年代:ウォルフ 中枢性の過敏化による痛みの感受性の変化を示しました。
2001~2010年:アメリカ議会は「痛みの10年」を発表しました。
21世紀になり痛みの研究はますます盛んになりつつあります。
・イオンチャネルの解明 ・痛み関連タンパク ・ニューロン/グリア ・脳画像研究 ・社会
痛みを感じないと我々の生活は想像以上におびやかされます。
痛みは反射を通しても生体を守っています。(引込め反射)
・熱い物に触れると無意識に手を引っ込める動作などがわかりやすいでしょう
痛みを感じないと、気づかないうちに重篤な症状になってしまう可能性があります。

痛みを感じない病気のため、重篤な状態になってしまう事例
→先天性無痛症(http://www.nanbyou.or.jp/entry/773)

痛みを引き起こす刺激を、
「危険な物」として認識できないため、
怪我をしやすい体になります。
(1)痛み刺激を伝える神経線維
痛みは、体の中にある2種類の神経線維により伝わり、脳で認識されます。
Aδ線維:瞬間的に痛みを認識する
C線維:ずきずきするような、長引く痛み
(2)痛み刺激に対する認知・認識
イラスト20世紀初頭まで、痛みを認知する場所は、中枢は視床であると考えられていました。
Head H, Holmes G, : Sensory disturbances from cereberal lesions. Brain 34, 1911
つまり、組織損傷から発生した「痛みの信号」は、大脳の中の視床という場所で認識されるものだと考えられていたのです。
その後様々な研究が行われてきましたが、20世紀後期には、脳機能イメージング法の発展により、視床以外の脳領域が、実際の痛みを感じることに関与していることが明らかとなってきました。
(右図)脳機能イメージング(FMRI)による侵害刺激に対する脳活動部位の検出。
健常者の右手に対して痛み刺激を行うと、視床だけでなく、脳内の色々な場所で神経活動が観察されます。
「痛みの信号」は、痛みの神経線維を伝わり、大脳で認識されますが、脳イメージング法を用いた研究によると、視床だけではなく、体性感覚野、帯状回、前頭葉、小脳など、様々な場所で認識されているようです。
つまり、「痛みの信号」は本人の喜怒哀楽や運動など、様々な活動により信号自体が変化し、その結果、認識される痛みの強さに変化が生じることがわかってきたのです。
<例>
集中した運動 → 痛みを軽減する。
怒り・不安 → 痛みを増強する。
安心 → 痛みを軽減する。
痛みは、生体にとって警告信号であり、「死亡または重度後遺障害」につながる可能性のある重要なサインとなります。


・苦い薬の味 事故を起こした時の不快な体験。
・ドアに手を挟んで強い痛みを経験した人は同じ状況に遭遇した時注意深く行動する。
・腰痛経験者は、「重い荷物を持ったときの画像」を見て、不快な体験をすることがある。
・組織損傷がなくても、患者さんが語る痛みは実在する可能性がある。
作家の夏樹静子さんは、執筆活動の休業により、難治性の慢性腰痛から解放されました。
自分の体の変化だけでなく、社会問題、家庭問題など、痛みとは直接関係のないと思われることが、体の痛みを増強する原因になることが知られています。
